シチューの味わい深い歴史
あるときはゴージャスに、あるときは質素倹約に家庭的に食べられる「シチュー」の歴史とは?

火と共に生まれたシチュー

「シチュー」という言葉(メニュー)を聞くと、ほのぼのとした、温かく、優しく、真心こもったものを連想する人も多いのではないだろうか。コトコトと煮込んだシチューに家庭の味の延長があるからなのだろうか? 実は、その答えがシチューの歴史に隠されている。人類が火を使い始めた太古の昔、火によって、人類の食材はとてつもなく広がった。生のまま食べてしまうか、干物にするしかなかったものも、焼く、煮るといった調理で口にすることができる。固くて食べられなかった野菜やスジ肉も、煮ることで柔らかくできるからだ。
その後、器が考え出されて、煮るという調理法がさらに加速度を増して行き渡る。そもそも「シチュー」は“煮る”という意味に由来している。現在でもフランスでは煮物料理(シチュー)が、食卓を彩る最もポピュラーな料理になっている。マッチなどが簡単に手に入るようになるまでは、火を起こすというのは大変だったので、火を絶やさないように薪を燃やし続けていた。その火を活用するために鍋をかけておくのは当然の成りゆきで、その鍋の中ではいつも何かが煮えていた。シチューは、火の歴史でもあったのだ。


シチューは、フランス料理の原点
そのシチューの原型とも言える料理に革命をもたらしたのは、16世紀半ばにイタリア・トスカーナのメディチ家から(現在のフランスの)アンリ二世のところへ嫁いできたカトリーヌ妃と従えていた料理人たちだった。当時、ルネッサンス期のイタリアは、料理においても先進的だった。中世の未発達な味付け、調理法から脱皮したイタリアは、シチューを初め様々な料理に革命をもたらしている。カトリーヌ妃の連れてきた料理人たちは、フランスの宮廷料理に新しい風を送りこみ、ナイフとフォークを使う今のフレンチのスタイルを確立している。
その後、フランスには絢爛たるルイ王朝時代が到来することで、イタリアの影響は次第に薄れ、宮廷の宴会を中心としたフランス料理の全盛期を迎える。手の込んだ煮込みや、貴族の名にちなんだソース、贅沢な形式が次々に生まれたのがこの時代だった。フランス料理の源、煮込み料理(シチュー)の煮汁を進化させ、料理のソースとして独立させることによって、粗削りな煮込み料理をフランス料理最大特徴の「ソース料理」へと発展させることができたわけだ。この、実と汁とを分けたところが最大のポイント。フランス料理の基本は、今でもこの延長線上にあり、素材から出た汁を煮詰めたり調味料を加えたりして、元の素材に戻す。これによって元の素材は、より素材本来の風味を増すことになる。これがフランス料理の無限の可能性を生み出している。
1789年には、フランス革命によって王侯貴族に抱えられて優遇されていた料理人たちが主人を失い、地方のレストランなどへ散るということがおきている。その料理人たちによって、フランスの多様な地方料理が発達し、近代的な様々なシチューも誕生したという。どこか素朴で、家庭的でハートフルなシチューには、フランスの大きな歴史がぎっしり詰まっている。歴史もじっくり味わって食べよう!!



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